年末調整が済んでいても、そこで終わりとは限りません。会社員でも確定申告を見直したほうがいい場面はあります。社会保険料控除も含めて、迷いやすい点を先に整理しておきましょう。
01 6月に見直す意味は、申告の締切ではなく“取りこぼし”に気づけるから
会社員の確定申告は、3月15日を過ぎたら終わり。そう思っている人、かなり多いですよね。けれど実務では、6月は住民税の決定通知書が届き、前年の所得や控除を落ち着いて見返しやすい時期なんです。
住民税の通知書で確認したいポイント
私が過去に相談を受けた東京都新宿区の34歳会社員、仮に田中さんとしておきますが、2025年6月に住民税の通知書を見て初めて「寄附金控除が反映されていない」と気づきました。年末調整で全部終わったつもりだったんですが、ワンストップ特例の条件外になっていたんですね。正直、こういう見落としは珍しくないです。

ポイントは、6月に申告書を出す話ではなく、次に修正申告や更正の請求が必要かを見抜く視点を持つことだ。国税庁の案内でも、還付申告は通常5年さかのぼれる余地があります。つまり2026年6月に見直すなら、2021年分以降で漏れがないか確認する価値があるわけです。
年末調整で片づく人が多いのは事実だ。けれど、年末調整で拾えない控除は毎年きちんと残る。
この“年末調整では終わらない控除”が、次の3項目の核心なんですよ。
02 まず押さえたい3項目。医療費、副業、寄附は会社員でも申告の出番がある
見直す順番はシンプルです。1番目が医療費、2番目が副業、3番目が寄附。初心者なら、この3つだけ先に確認すべきだと私は考えます。
- 医療費控除
- 1年間の医療費が一定額を超えた
- 生計を一にする家族分を合算した
- 通院の公共交通機関代を記録している
- 副業所得の確認
- フリマ、原稿料、業務委託の入金がある
- 必要経費を引いた後の所得を把握していない
- 住民税の扱いまで見ていない
- 寄附金控除
- ふるさと納税を6自治体以上にした
- 医療費控除や住宅ローン控除の初年度申告と重なった
- ワンストップ特例の申請漏れがある

たとえば大阪市の41歳会社員、佐藤さんは2025年に歯科矯正で38万円、家族の通院費で7万円、合計45万円近い支出がありました。ところが、源泉徴収票だけ見て「自分は会社員だから関係ない」と判断していたんです。もったいない話ですよね。
副業も同じです。月2万円のライティング収入でも、1年で24万円。経費を引いた所得額しだいで申告の要否が変わるので、入金額だけ見て安心するのは危ない。ここ、かなり誤解が多いところです。
ここまでで「自分は何を確認すべきか」は見えてきたはずです。次にやや誤解されやすい、健康保険料控除の話を整理しましょう。
03 “健康保険料控除”ではなく、実務では社会保険料控除で見る
ここ、言葉が少しややこしいんです。会社員が給与明細で見ている健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料は、税金の世界では社会保険料控除として扱います。つまり、健康保険料だけを切り出して別控除として考えると、整理がぶれやすいんですね。
給与天引きの社会保険料は、ふつう年末調整で反映済みです。だから、自分の給与明細に載っている健康保険料をもう一度申告して二重に控除する話ではありません。ここを勘違いすると、記入ミスの原因になる。事実、国税庁の確定申告書等作成コーナーでも、給与から差し引かれた社会保険料は源泉徴収票ベースで確認する流れです。

では、どこで差が出るのか。典型例は、自分で払った国民年金保険料や、生計を一にする家族の国民健康保険料を本人が負担したケースです。たとえば転職の谷間で2025年4月に国民年金を自分で納付した、親の国保を2025年中に12万円負担した、こういう支払いは年末調整に乗っていないなら確認すべきだ。
会社員の見直しで大事なのは、新しい控除を探す話ではない。年末調整に入っていない支払いを拾う話だ。
この視点を持つと、源泉徴収票の見方が一気に変わります。次はそこを絞って見ていきます。
04 源泉徴収票で見る場所は3か所。ここだけ見れば迷いにくい
初心者に源泉徴収票を1枚渡して「全部確認してください」と言うのは、正直ちょっと酷です。見る場所は3か所で十分。私はいつもこの順番で見てもらいます。
- 支払金額: 給与収入の総額を確認する
- 所得控除の額の合計額: 年末調整で入った控除の大枠を見る
- 社会保険料等の金額: 給与天引き分や申告済み分の手がかりをつかむ

たとえば年収580万円の会社員なら、医療費45万円や寄附4万円が年末調整外なら、源泉徴収票だけでは最終形になっていない可能性があるんです。ここで住民税通知書と見比べると、控除の反映漏れに気づきやすい。
あ、もう一つ。副業がある人は、給与の源泉徴収票だけで安心しないでください。業務委託の支払調書、入金履歴、経費メモの3点をそろえるだけで判断しやすくなります。
副業収入がある会社員の申告チェック
どう言えばいいかな。確定申告は“難しい手続き”というより、書類のつじつま合わせなんですよ。つじつまが見えた人から、急に怖くなくなる。最後に、6月のうちにやる具体策を3つだけ置いておきます。
05 6月の30分でやること。来年の申告を楽にする実務メモ
ここまで読んだなら、やることは絞れます。難しい順ではなく、戻りやすい順で動くのがコツです。
- 源泉徴収票と住民税決定通知書を並べる
2026年6月中に10分でいいので、控除の反映違和感がないか見てください。寄附金控除や医療費控除を出した記憶があるのに住民税額が高い、そんな違和感は見逃さないほうがいい。
- 自腹で払った社会保険料を書き出す
国民年金、家族の国保、任意継続の保険料。この3つは会社員でも漏れやすいです。2025年1月から12月までの支払額をメモにまとめるだけで、次の判断が早くなります。
- 医療費・副業・寄附の証憑を1か所に集める
封筒1枚でも、クラウド1フォルダでもいい。領収書、受領証、入金履歴を分けずに置く。これだけで翌年2月の心理的ハードルがかなり下がります。
医療費控除とセルフメディケーション税制の違い

申告で差がつく人は、税法を暗記した人ではない。6月に一度だけ、書類を見返した人だ。
3行で言うとこうです。
- 会社員でも、医療費・副業・寄附は申告の出番がある。
- 健康保険料は単独ではなく、社会保険料控除で見る。
- 6月は締切の月ではなく、漏れを発見する月だ。
もし今、机の引き出しに源泉徴収票があるなら、まず開いてください。次に住民税の通知書を横に置く。最後に、2025年中に自分で払った保険料がないか、スマホの明細で確認する。そこまでで15分。たぶん、思っていたよりずっと整理できますよ。